下肢静脈瘤とは
下肢(脚)の血管がまるで瘤(こぶ)のようにボコボコと浮き出ている、浮腫む、下肢がだるい、脚の傷が治りにくい、脚の皮膚が変色するなどの症状がみられる原因として、下肢静脈瘤が考えられます。下肢静脈瘤では、脚の静脈内にある血液の逆流を防止している弁が壊れてしまい、適切に閉じられなくなることで、血液が逆流し静脈内に溜まってしまいます。そのため血管がだんだん拡張してしまい、血流障害が起きることで上記のような症状が出現してしまします。要因については、長時間の立ち仕事、加齢、遺伝、女性の出産・妊娠、脂質異常をはじめとする生活習慣病、喫煙習慣なども挙げられます。
下肢静脈瘤は主に2つのタイプ(伏在型静脈瘤、軽症静脈瘤)に分類されます。伏在型静脈瘤は、脚の比較的太い静脈で起こります。軽症静脈瘤は伏在型の静脈から枝分かれしたやや細い血管で起こる下肢静脈瘤で、側枝静脈瘤、網目状静脈瘤、蜘蛛の巣状静脈瘤に分けられます。
伏在型静脈瘤でよくみられる症状は、足がだるい、重い、疲れるといったもので、こぶ状の血管が太ももの内側からふくらはぎの内側あるいは裏側にかけてみられます。さらに進行するとこぶは大きくなり、だんだん盛り上がっていきます。それでも放置していると皮膚の色素沈着や皮膚潰瘍などの合併症を発症させることもあります。保険適応の血管内レーザー焼灼術が第一選択となります。院長は下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の指導医資格を有しています。
軽症静脈瘤では、ひざ裏やふくらはぎの血管(静脈)が赤紫や青色に変色し、それが皮膚上に浮かび上がり、網目、または蜘蛛の巣のような模様が現れます。ただ、血管(静脈)がこぶ状になったり、痛みやかゆみなどの自覚症状が出ることはほとんどありません。そのため多くの患者様は、見た目の悪さを主訴に来院されます。伏在型静脈瘤とは異なる種類の、表面から照射するレーザー治療などがあります。(この場合は保険適用されません。)レーザー治療などもといった治療法があげられますが、この場合は保険適用されませんので全額自己負担となります。
なお下肢静脈瘤が疑われる場合、問診・視診・触診のほか、超音波検査を行って診断を行います。検査の結果、治療が必要と判断される場合には、以下の治療を行います。
下肢静脈瘤の主な治療法
圧迫療法(弾性ストッキング)
一般のストッキングとは異なる特殊な編み方でつくられている医療用弾性ストッキングを着用し、足を強く圧迫していく治療法になります。これによって静脈瘤を含む表面の静脈は圧迫され、逆流しにくくなるため心臓に血液が戻りやすくなります。患者様の体に合うサイズと強さ(圧迫感)の弾性ストッキングを用いれば、静脈瘤の進行をある程度は止められるようになります。なお、診察については保険適用となりますが、弾性ストッキングの購入費用については保険適用外となります。
硬化療法
硬化剤(血管を固める薬)を静脈に注入して血管を閉塞させるのが硬化療法です。患部の静脈を閉塞させることで、血液は正常な静脈へと流れるようになり、症状が改善していきます。これは比較的細い静脈瘤によく用いられる治療法です。
ストリッピング手術
レーザー治療では対応できないとされる太い静脈の場合に選択される手術療法です。具体的には、足の付け根を切開(2~3cmほど)し、静脈の中に細いワイヤーを入れます。そしてワイヤーごとその静脈を引き抜くという手術です。これにより逆流を起こして血流が悪かった部位が除去されるため、正常に機能している他の静脈を通ってスムーズに血液が心臓に戻っていくようになります。
同手術は、昔から行われていた手術で、再発の可能性は低いと言われています。ただ、静脈を引き抜く際に強い痛み、皮下出血、引き抜いた血管の周囲にある神経を傷つけることがあります。
血管内レーザー治療
逆流している静脈内にレーザーファイバーを挿入し、レーザー光によって血管を収縮、閉塞させる治療です。血管を閉塞させることで逆流する血液がなくなり、正常に機能している他の静脈を通ってスムーズに血液が心臓に戻っていくようになります。
保険診療の対象で、局所麻酔(TLA麻酔)による日帰り手術も可能です。TLA麻酔は、出血の抑制、鎮痛効果を長時間持続させるという特徴があります。ちなみに閉塞した静脈は最終的に体内へ吸収されます。